「飲食店を開業したいけれど、事業計画書の書き方がわからない」「テンプレートを使って効率よく作成したい」——そんな悩みを抱えていませんか?
日本政策金融公庫のデータによると、創業融資の審査では事業計画書の完成度が合否を大きく左右します。実際に融資を受けた飲食店オーナーの多くが「計画書の準備に最も時間をかけた」と回答しています。
しかし、ゼロから事業計画書を書き上げるのは骨が折れるもの。そこで活用したいのが飲食店向けの事業計画書テンプレートです。
この記事では、無料で使えるテンプレートの入手先はもちろん、融資審査に通る書き方のコツ、売上予測・収支計画の立て方、さらには融資面談で差をつけるブラッシュアップ術まで徹底解説します。初めての開業でも、この記事を読めば説得力のある事業計画書が完成します。
「飲食店を開業したいけれど、事業計画書の書き方がわからない」「テンプレートを使って効率よく作成したい」——そんな悩みを抱えていませんか?

日本政策金融公庫のデータによると、創業融資の審査では事業計画書の完成度が合否を大きく左右します。実際に融資を受けた飲食店オーナーの多くが「計画書の準備に最も時間をかけた」と回答しています。

飲食店の事業計画書とは?テンプレートの種類と選び方

飲食店の事業計画書とは、開業の目的・コンセプト・資金計画・売上見込みなどを体系的にまとめた書類です。金融機関への融資申請だけでなく、自分自身のビジネスプランを整理するためにも欠かせません。

事業計画書と創業計画書の違い

「事業計画書」と「創業計画書」は混同されがちですが、厳密には異なります。
項目事業計画書創業計画書
用途融資・補助金・社内計画など幅広い主に日本政策金融公庫の創業融資用
書式自由形式が多い公庫指定のフォーマットあり
分量数ページ〜数十ページA3用紙1枚(両面)が基本
対象新規・既存問わず創業時(開業前〜開業直後)
日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合は創業計画書(指定フォーマット)の提出が必須です。一方、民間銀行や信用金庫では自由形式の事業計画書を求められることが多く、より詳細な収支計画を添付するケースもあります。

テンプレートの種類と特徴

飲食店向けの事業計画書テンプレートは、大きく3つのタイプに分けられます。

自分に合ったテンプレートの選び方

テンプレート選びで迷ったら、以下の基準で判断しましょう。
ポイント:どのテンプレートを使う場合でも、数字の根拠と独自の戦略は自分の言葉で書くことが融資成功のカギです。

事業計画書が融資審査で重要な3つの理由

飲食店の開業資金は平均1,000万〜1,500万円と高額です。多くの人が日本政策金融公庫や信用金庫からの融資に頼りますが、審査の可否を分けるのが事業計画書の出来栄えです。

理由①:返済能力の根拠を示せる

金融機関が最も知りたいのは「貸したお金が返ってくるか」です。事業計画書の収支計画が現実的であれば、毎月の返済原資がどこから生まれるのかを数字で証明できます。
たとえば、月商200万円の居酒屋で食材原価30%・人件費28%・家賃10%・その他経費15%の場合、営業利益は17%(34万円)。ここから返済に充てられる金額を具体的に示すことで、融資担当者の安心感が格段に上がります。
逆に「なんとなく月商200万は行けると思います」では、根拠なしと判断され審査に通りません。

理由②:経営者としての本気度が伝わる

融資の審査では書類だけでなく面談での印象も合否に影響します。事業計画書を細部まで作り込んでいる人は、面談で質問されても即座に回答できます。
融資担当者が見ているポイントは以下の通りです。
事業計画書を丁寧に作成すること自体が、これらの質問に答える準備になるのです。

理由③:開業後の経営判断の基準になる

事業計画書は融資のためだけに作る書類ではありません。開業後の経営でも計画と実績のズレを把握する羅針盤として機能します。
たとえば、開業3ヶ月後に「計画では月商200万円だったが実際は150万円」と分かれば、早期に原因を分析し対策を打てます。事業計画書がなければ、そもそも何が想定と違うのかすら把握できません。
補足:日本政策金融公庫の融資では、開業後も定期的な業況報告を求められることがあります。事業計画書があれば報告書の作成もスムーズです。

【項目別】飲食店の事業計画書の書き方と記入例

ここでは、日本政策金融公庫の創業計画書フォーマットをベースに、飲食店の事業計画書で記入すべき項目と具体的な記入例を解説します。どのテンプレートを使う場合でも、以下の8項目は必ずカバーしておきましょう

①創業の動機・事業の目的

融資担当者が最初に読む項目です。「なぜ飲食店を始めるのか」を、経験・スキル・想いを織り交ぜて具体的に書きます。
記入例
「飲食業界で15年間、和食料理人として修行を重ねてきました。直近5年間は都内の割烹料理店で料理長を務め、月商800万円の店舗運営を経験。地元・〇〇市には本格的なうなぎ専門店が少なく、培った技術と地元食材を活かした店舗を開業することで地域の食文化に貢献したいと考えています。」
ポイントは経験年数・役職・実績を具体的な数字で示すことです。「料理が好きだから」だけでは説得力がありません。

②経営者の略歴・資格

飲食業での実務経験を時系列で記載します。調理師免許・食品衛生責任者などの資格も必ず記入しましょう。
期間勤務先業務内容
2010年4月〜2015年3月〇〇割烹(東京都)調理補助→焼き場担当
2015年4月〜2020年3月△△料亭(東京都)煮方→副料理長
2020年4月〜現在□□割烹(東京都)料理長(月商800万円の店舗を運営)
飲食業の経験がない場合でも、マネジメント経験・接客経験・食品関連の知識など、経営に活かせるスキルを明記しましょう。FC加盟の場合は「本部の研修制度で〇ヶ月の実地訓練を受ける予定」と記載すると好印象です。

③取扱商品・サービスの内容

提供するメニューと客単価を具体的に記載します。飲食店では「何を・いくらで・誰に」提供するのかが明確であるほど評価されます。
記入例
セールスポイントには、仕入れルート・調理法・他店との差別化要素を書きます。「〇〇県の養殖場から直接仕入れ」「備長炭で焼き上げる本格派」など、具体的なほど信頼度が上がります。

④ターゲット顧客と市場環境

「どんなお客様に来てほしいのか」を明確にします。年齢層・性別・来店動機・利用シーンまで掘り下げて記載しましょう。
記入例
「主要ターゲットは40〜60代の男女。特に法事・接待・記念日利用を想定。〇〇駅周辺の商圏人口は約5万人で、半径1km以内にうなぎ専門店は1店舗のみ(チェーン店)。本格的な個人店は競合不在の状況。近隣にはオフィスビル3棟があり、平日ランチの法人需要も見込める。」
ここで重要なのは実地調査に基づいたデータです。商圏人口・競合店数・交通量は、自治体の統計データや実際に現地を歩いて確認した情報を記載しましょう。

⑤立地・店舗計画

出店予定地の情報を記載します。物件が確定していない段階でも、候補エリアの特徴と選定理由を書いておきましょう。
居抜き物件を活用すると内装工事費を大幅に抑えられます。融資担当者にとっても「コスト意識がある」と好印象です。前テナントが飲食店であれば、厨房設備・排気ダクト・グリストラップなどの設備投資も削減できます。

⑥開業資金と調達方法

開業に必要な資金の総額と、その調達先を一覧にします。自己資金は開業資金の3分の1以上が融資審査の目安です。
資金用途金額
物件取得費(保証金・礼金・仲介料)380万円
内装工事費350万円
厨房設備・備品200万円
開業前人件費・研修費50万円
広告宣伝費30万円
運転資金(3ヶ月分)240万円
合計1,250万円
調達先金額
自己資金450万円
日本政策金融公庫(創業融資)600万円
親族からの借入200万円
合計1,250万円
運転資金は最低3ヶ月分を確保するのが鉄則です。開業直後は想定より売上が伸びないケースが多く、運転資金が不足すると資金ショートの危険があります。

売上予測・収支計画の立て方(FLコスト・損益分岐点)

事業計画書のなかで融資担当者が最も注目するのが収支計画です。飲食店ならではの指標であるFLコスト・損益分岐点・席回転率を理解し、現実的な数値を組み立てましょう。

FLコストとは?飲食店の利益構造を理解する

FLコストとは、F(Food=食材原価)とL(Labor=人件費)の合計のことで、飲食店の経営指標として最も重要な数値です。
指標理想値計算式
F(食材原価率)25〜35%食材費 ÷ 売上高 × 100
L(人件費率)25〜35%人件費 ÷ 売上高 × 100
FL比率55〜65%(食材費+人件費)÷ 売上高 × 100
FL比率が65%を超える場合は要注意です。家賃(10%前後)・水道光熱費(5〜7%)・その他経費を差し引くと利益がほぼ残りません。
うなぎ専門店の場合、食材原価率は35〜40%と高めになりがちです。その分、客単価を高く設定する・テイクアウトで回転率を上げるなどの戦略が必要になります。

売上予測の計算方法

飲食店の売上予測は以下の計算式が基本です。
月間売上 = 席数 × 席回転率 × 客単価 × 営業日数 × 満席率
具体例で計算してみましょう。
項目ランチディナー
席数28席28席
席回転率1.5回転1.0回転
客単価1,800円4,500円
満席率60%50%
日商45,360円63,000円
日商合計:約108,360円 × 月25日営業 = 月商約271万円
注意:開業直後は認知度が低いため、上記の70%程度(月商190万円前後)を初月の想定とし、3ヶ月目で80%、6ヶ月目で100%に到達する段階的な計画が現実的です。

損益分岐点の算出

損益分岐点とは「利益がゼロになる売上高」のこと。この金額を下回ると赤字、上回れば黒字になります。
損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
先ほどの例で計算します。
費目月額区分
家賃30万円固定費
人件費(社員)45万円固定費
水道光熱費(基本料)5万円固定費
リース・減価償却8万円固定費
返済(元利均等)10万円固定費
その他固定費7万円固定費
固定費合計105万円
変動費率(食材原価率35%+パート人件費5%+水道光熱費変動分3%)= 43%
損益分岐点 = 105万円 ÷(1 − 0.43)= 約184万円
月商271万円の計画なら損益分岐点を大きく上回っており、融資担当者に「十分な利益余力がある」と判断してもらえます。

事業計画書テンプレートの無料ダウンロード先まとめ

飲食店の事業計画書テンプレートは、公的機関や専門サイトから無料でダウンロードできます。ここでは信頼性が高く、実際に融資申請で使えるテンプレートを厳選して紹介します。

日本政策金融公庫の創業計画書テンプレート

最も利用されているのが日本政策金融公庫の創業計画書です。公庫のWebサイトから無料でダウンロードでき、Excel・PDF形式が用意されています。
さらに、飲食業向けの記入例つきテンプレートも公開されています。初めて事業計画書を書く人は、まずこの記入例を読み込んでから自分のケースに当てはめるのが効率的です。

中小企業庁・よろず支援拠点のテンプレート

中小企業庁が運営する「よろず支援拠点」では、業種別の事業計画書テンプレートや経営計画書のフォーマットが提供されています。
よろず支援拠点は全国47都道府県に設置されており、対面での相談も無料です。テンプレートをダウンロードするだけでなく、専門家のアドバイスを受けながら作成するのが最も確実な方法です。

民間サイト・税理士事務所のテンプレート

飲食店開業に特化した民間のテンプレートも多数あります。公的機関のフォーマットよりも詳細な収支計画を立てられるのが特徴です。
提供元タイプ特徴おすすめの使い方
税理士事務所FLコスト・損益分岐点の計算シート付き公庫テンプレートの補足資料として添付
飲食コンサル会社業態別(居酒屋・カフェ・ラーメン等)の専用テンプレート自分の業態に合ったものを選ぶ
クラウドサービスWebブラウザ上で編集可能チーム(共同経営者・税理士)と共有しながら作成
注意:民間テンプレートを使う場合も、公庫に融資申請するなら公庫の創業計画書は別途必要です。民間テンプレートはあくまで補足資料として位置づけましょう。

融資面談で差がつく!事業計画書ブラッシュアップのコツ

事業計画書を書き上げたら終わりではありません。融資面談では計画書の内容について詳しく質問されます。ここでは面談で好印象を与えるためのブラッシュアップポイントを解説します。

数字の根拠を「3段階」で用意する

融資面談で最も聞かれるのが「この数字の根拠は?」です。売上予測や経費の見積もりには、楽観・標準・悲観の3パターンを用意しておきましょう。
シナリオ月商想定条件
楽観320万円口コミ好調・リピート率40%
標準271万円計画通りの集客
悲観200万円認知遅れ・競合出店
悲観シナリオでも損益分岐点(184万円)を上回っていれば、融資担当者は「最悪のケースでも返済は問題ない」と安心できます。悲観シナリオでギリギリの場合は、コスト削減策(パート比率の調整・仕入れ先の見直し等)も併せて準備しましょう。

競合分析は「足で稼いだデータ」が武器になる

Webで調べた情報だけでなく、実際に競合店に足を運んだ調査結果を盛り込むと説得力が段違いです。
面談で「実際に〇〇店に3回通って客層を確認しました」と言えれば、経営者としてのリサーチ力と本気度が伝わります。

想定リスクと対策をセットで記載する

融資担当者は「うまくいかなかった場合にどうするか」を必ず確認します。事業計画書にリスク対策を記載しておくことで、経営者としてのリスク管理能力をアピールできます。
想定リスク対策
開業直後の集客不足SNS運用・近隣へのチラシ配布・開業記念割引の実施
食材価格の高騰複数の仕入れ先を確保・メニュー価格の段階的見直し
人材確保の難航飲食専門の求人サイト活用・調理学校との連携
近隣への競合出店テイクアウト・デリバリーの強化・常連客の囲い込み施策
ポイント:リスク対策は「具体的な行動レベル」まで落とし込むのがコツです。「集客が少なければ頑張ります」ではなく「月間広告予算5万円でInstagram広告を出稿し、半径3km圏内のユーザーにリーチします」のように書きましょう。

よくある失敗と事業計画書作成の注意点

事業計画書の作成でありがちなミスを知っておくことで、同じ失敗を避けられます。ここでは融資審査で落とされやすい典型的な失敗パターンと、その対策をまとめました。

失敗①:売上予測が楽観的すぎる

最も多い失敗が根拠のない高い売上予測です。「知り合いの店は月商500万」「SNSでバズれば客が来る」といった希望的観測は、融資担当者にすぐ見抜かれます。
対策として以下を心がけましょう。

失敗②:経費を低く見積もりすぎる

売上を高く見積もるのと同時に、経費を少なく見積もるのも危険です。特に見落とされがちなのが以下の項目です。
「これくらいで済むだろう」という甘い見積もりは、開業後の資金ショートに直結します。

失敗③:テンプレートを埋めるだけで終わっている

テンプレートの記入欄をすべて埋めたからといって、良い事業計画書になるとは限りません。融資担当者は「この人に貸して大丈夫か」を総合的に判断しています。
テンプレートを超えて伝えるべきポイントは以下の通りです。
最終チェック:完成した事業計画書は、飲食業界に詳しい税理士やよろず支援拠点の専門家に必ず見てもらいましょう。第三者の視点で矛盾や抜け漏れを指摘してもらうことで、格段に完成度が上がります。

まとめ

飲食店の事業計画書は、融資審査を通過するための必須書類であると同時に、開業後の経営を支える羅針盤です。この記事のポイントを振り返りましょう。
事業計画書の作成は手間がかかりますが、この工程を丁寧に行うことが融資成功と安定した飲食店経営への第一歩です。まずはテンプレートをダウンロードして、できるところから書き始めてみましょう。